ホラー映画おすすめ2020
『The Dark and the Wicked』
『The Dark and the Wicked 』にはジャンプスケア・シーンが各所に出てきますから、普段なら「ああ、でもこれって怖い?」と言うようなホラーファンも十分に満足できると思います。脚本・監督のブライアン・ベルティーノは、全体的に雰囲気やじわじわと忍び寄る恐怖に力を入れており、そういう意味で『赤い影』、『テナント/恐怖を借りた男』、『エイリアン』オリジナル版、『シックス・センス』といった20世紀の名作を彷彿(ほうふつ)とさせる映画です。
冒頭15分がとにかく圧巻です。観客は、平坦な空き地に囲まれ、「ヤギの鳴き声が聞こえてくる納屋付きの田舎の農家」という、物語のコアとなる設定を歩き回り、そのなかで主な登場人物を知ることになります。父親(マイケル・ザグスト)は長年衰弱していました。死の床となるであろうベッドで、酸素吸入を使って呼吸している状態で登場します。母親(ジュリー・オリバー・タッチストーン)は、主に一人で夫の世話をしなければならないことから、心を痛めています。
ルイーズ(マリン・アイルランド)とマイケル(マイケル・アボット・ジュニア)がようやく両親の元に到着するのですが、2人の埋もれた罪悪感や心配の気持ちがはっきりと感じられ、うなるようなサウンドトラックと相まって、不穏な雰囲気が強まります(音響デザイナーのジョー・ストックトンは、マルチトラック・ステレオを使用して、感情のネジを優しく締めていきます。
はっきりと聞き取れない人声や、床がきしんだりする音が周囲のあちこちから聞こえてきて、気のせいではないのかと疑ってしまうようなサウンド効果を出しています)。
ここではいったい何が起こっているのか?何かダークで邪悪なことが起こっているのは明らかなのですが、どうやらそれだけではないようです。不快で、俗悪で、おそらく邪悪な何か。それが何であるかはわからないが、観客は、パフォーマンスの要素やアーティスティックな効果の一つひとつから、何か我々の五感では理解できないことが起きていることを認め、それを告白し、何らかの方法で対処することを強いられます。
そうして初めて、通常の状態に戻ります。映画は、「なんてこった!」的な大きなショックで始まり、そこから徐々に話が発展していきます。小さな農家がオーバールック・ホテルのインディーズ映画版といった役目を果たし、各章は点滅する命名日によって分かれています。
意見は分かれるかもしれませんが、私自身は、映画の前半と後半を比較すると、前半の方に軍配を上げます。というのも、前半では地獄のような出来事がすぐに爆発するからです。その後は、主人公たちが恐ろしくて説明できないような出来事に遭遇しても、そのことについて説明されない(「そのことについては話したくない」という言葉がよく使われています)ので、物語がなんだかきな臭くなり、自分が取り残されたような気になりました。
ショックと恐怖の間に息抜きできる間が十分にないことから、恐怖がじわじわと積み重なっていき、最後に衝撃を受けるというような感じではありませんでした。これがないのは、最近のホラー映画の多くで問題となっていることですが、ただここでは致命的な問題にまではなっていません。後半の3分の2も良いと思いますが、とにかく前半が最高に素晴らしいのです!しかも、観客に急ぐなと告げ、多くのことを想像させるという点で、大胆だとも思います。また、親子の感情的な動きに焦点を当てていますので、心理的に突き動かされる作品と言えるで