今年のアカデミー賞総括
『ノマドランド』が最優秀作品賞に、アンソニー・ホプキンスとフランシス・マクドーマンドがそれぞれ最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞に選ばれました。4年間の大腸がんとの闘病生活の末に8月に亡くなったチャドウィック・ボーズマンを抑え、ホプキンスが主演男優賞を獲得したことは、驚きでした。『マ・レイニーのブラックボトム』での好演により、ボーズマンは同賞にノミネートされていました。
今年は、有色人種の女性が初めて監督賞を受賞し、黒人女性が初めてメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞するなど、「アカデミー史上初」が数多く起こった年でした。
『ノマドランド』が最優秀作品賞を受賞。
『ノマドランド』がアカデミー賞最優秀作品賞を受賞しました。さらに、『ノマドランド』の監督であるクロエ・ジャオが、最優秀監督賞を受賞しました。『ノマドランド』は、両親の死をきっかけに家を飛び出し、バンに乗ってちょっとした日雇い仕事をしながらアメリカ中を旅する女性、ファーン(フランシス・マクドーマンド)を題材にした本(2017年に出版)に着想を得て作られた作品です。本作には脇役として、現実にノマド生活をしている人たちが登場します。
タイラー・ペリー、ジーン・ハショルト友愛賞を受賞。
ペリーは舞台に上がると、ホームレスの女性にお金をあげようとしたときの話をしました。女性はお金よりも、一足の靴を求めてきた、と。
ペリーは、その女性が 「神様、ありがとう。足が土から離れたわ」と言ったのを覚えています。
ペリーはその女性から、「ペリーさんから軽蔑されると思った」と言われたそうです。
ペリーはこの賞を、どんな時でも、率先して立ち上がることができる人に捧げると語りました。そのような人がいることで、癒しと変容が起きるからだ、と。
さらに、「率先して立ち上がることができる皆さん、憎しみを拒む皆さん […] 裸足で歩く誰かを助けようとする皆さん、この賞はあなたのためのものでもあります」と付け加えました。
クロエ・ジャオ、有色人種の女性として初めて最優秀監督賞を受賞。
『ノマドランド』では、クロエ・ジャオが最優秀監督賞を受賞しました。アジア人女性および有色人種女性として初めての受賞となりました。
また、女性監督としては史上2人目となります。
『ミナリ』で助演女優賞を受賞したユン・ヨジョンは、韓国出身の女優として初めてアカデミー賞を受賞しました。
メイクアップ&ヘアスタイリング受賞者、「ガラスの天井」を打ち破る
『マ・レイニーのブラックボトム』でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したミア・ニールは、受賞スピーチの中で、他のマイノリティ女性を前面に押し出しました。
同部門に初めてノミネートされた黒人女性は、ニールとジャミカ・ウィルソンでした(セルジオ・ロペス=リベラも2人と並んで受賞)。
ニールは、「ジャミカと私はガラスの天井を打ち破り」、未来へ大きく期待すると、嬉しさを隠しきれないようにスピーチしました。
「黒人のトランスジェンダー女性たち、アジア系の姉妹たち、ラテン系の姉妹たち、先住民の女性たちがここに立つ未来が想像できるのです。そしていつかそれは、珍しいことでも画期的なことでもなくなると分かっています。それはただ、普通のことになるのです」とニールは付け加えました。
ダニエル・カルーヤ、受賞スピーチで、亡くなったブラックパンサーのリーダー、フレッド・ハンプトンに敬意を表する。
『Judas and the Black Messiah(原題)』でフレッド・ハンプトンを演じてオスカーを受賞したダニエル・カルーヤは、受賞スピーチの中で、亡くなったブラックパンサーのリーダーに敬意を表しました。